旅行じゃないよ、仕事だよ

私は都内の編集プロダクションに勤務している。

零細企業なので仕事は制作から営業まで何でもありだ。仕事が重なり社内でこなせないときはフリーランスに
外注することにしている。

数年前、進学情報誌の仕事をしていた頃、急ぎの取材が入った。ある学校のオリエンテーションの取材だったが、温泉地で開かれる新入生の歓迎会から取材しなければならないという。社内のスタッフはもう予定が入っていて動けない。さて、どうするか。

ちょうどインターネットも普及し始め、「お仕事情報」などのWeb掲示板もちらほら見かけるようになっていた頃だ。

モノは試しでここに募集をかけてみるか。メールで応募してもらえればこっちも電話応対に時間を取られずに済む。そう思い、「フリーライター急募!取材有」と、具体的な取材日や稿料などを明記して募集したところ、思いがけず多数の応募があった。こりゃいいわ、と思い、応募メールを読み始めたらこんな困ったちゃんが......。

「2歳の子供がいる主婦です。温泉地での取材、是非やらせていただきたいと思います。子供と一緒に旅行したいと思っていました。なお、子供の食事はご用意いただかなくて結構です」

なに? 誰が温泉旅行招待と言いましたか。取材ですよ、シュザイ。仕事なんです。2歳の子供連れなんてとんでもない! 大体あなたは文章書けるの?

よほどイヤミのひとつも送りつけてやろうかと思ったが、関わり合いになるのもイヤなのでそのままにしておいた。世の中には変わった人もいるものだ。しょっぱなからとんでもないのに当たっちゃったもんだ......当時はそう思っていた。今回は特別に変な人が応募してきただけ。同じ女性として「主婦はダメ」という結論を出したくはなかったのだ。

私も女性だから主婦SOHOの働きたい気持ちはよくわかる。できるなら彼女たちに仕事をしてもらいたい。そんな仏心でその後、私は主婦SOHOを使い続けるが、やがてそれが間違いだったと身をもって知ることになる。


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