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次のメールは現役の女性ライターからだった。
実績もあるしメールの書き方もきちんとしている。余談だが、メールの文面ひとつでその人の職業人としての自覚というか、「質」がなんとなくわかるものだ。
彼女のメールには取るに足らない自己アピールがないかわりに、経歴やPC環境、最近の仕事など必要なことが過不足なく書かれていた。
先ほどの非常識なメールを読まされた後だけに、この女性ライターのメールはピカッと光って見えた。やっと信頼して仕事を頼める人に出会えた!そんな気さえしたものだ。
今、同じメールを読み返してみると、ただのライターといっては失礼だが、ごく普通のビジネスメールに過ぎないのだが、当時はそれだけとんでもないメールが多かったということなのだろう。
早速私は発注予定の原稿のサンプルを圧縮ファイルにして送った。シリーズとして続けているものなので、そのイメージをつかんでもらうためだ。来社してもらってその場で説明してもよいのだが、今後急ぎの仕事をお願いするときのために、どこまでメールを使いこなしているのか調べておきたいという気持ちもあった。
まだインターネットといえばダイヤルアップが当たり前だった4?5年前は、未読処理は1日に1度だけという人も珍しくはなかった。こちらが朝一番で送ったメールを夜中に読まれては仕事がそれだけ遅れることになる。さらに、圧縮ファイルを扱えるかどうかも知っておきたい。私が出したメールはそうした諸々を調べるという意味もあったのだ。
彼女からはほどなく返事がきた。圧縮ファイルが受信できないという。どういう不具合によるものか、当時はこうした通信のトラブルにちょくちょく見舞われた。
原因はどうやらプロバイダ側にあるらしかった。別のプロバイダを使うと問題なく送受信できるケースばかりだったからだ。このため、応募要件には「複数のメールアドレスを所有していること」という項目も入れてあった。今のようにWebメールのサービスなどはまだなかった頃だ。要するに、複数のプロバイダに加入しておいてください、という意味の応募要件だったわけだ。
しかし、彼女はこの条件を満たしていなかった。すぐにでも別のプロバイダと契約するのかと思っていたら
「今回はご縁がなかったということで引き取らせていただくことにいたします」
とあっさり仕事を辞退するメールが届いた。
正直これにはガッカリした。在宅あるいは遠隔地で仕事をしようというSOHOにとって、通信環境は必要不可欠なものじゃないのか? まさかの時のメールアドレスなのだから、従量制の一番安いコースを選んでおけば大した費用もかからない。
私は自分の仕事が断られたことに加え、仕事に支障があるとわかっていてそれを改善しようとしない彼女の態度が不愉快だった。
そうこうするうちにも日は過ぎていき、外注はいっこうに決まらない。
私は少々焦りを感じていた。
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