納期は守ります

さて、非常識なSOHOをいろいろと紹介してきたが、いつも応募の段階で判断できるとは限らない。

ソフト解説本のムック制作にあたり、デザイナー兼DTPオペレーターを募集したときのことだ。備考欄に「プロの方求む!」と厳しく書いておいたので、以前のような勘違い主婦からのメールはほとんどなかった。

経歴を見る限り、応募者はみなそれなりに実績を積んできたSOHOばかりのように見えた。

その中から2人のSOHOを採用することにした。1人は27歳、もう1人は40歳でいずれも女性だ。

まず27歳SOHOのことから話そう。

彼女には手始めに特集頁の入り口にあたるページのデザインをお願いした。いわゆる「トビラ」と呼ばれるページだ。彼女にはムックのコンセプトから全体の構成、他のページのレイアウトフォーマットや組見本、おおまかなイメージまで説明し、ラフ案を出してもらうことにした。

初めてのつきあいということもあり、スケジュールは1週間とゆとりを持ってお願いした。

1週間後、彼女は約束通りにラフ案を送ってきたが、そのデザインは稚拙でそのまま使えるものではなかった。これがデザイナーの仕事なのか? と思ったくらいだ。

私は早速やり直してもらうことにした。部分的な手直しではなく、全面的に変更したほうがいいと思われたので、2日後に新しいラフ案を送ってもらうことにした。

再度送られてきたデザインは、私としては不満の残るものだったが、時間もないのでそのまま使うことにした。

この段階で、彼女を戦力として当てにするのは危険だと思い始めていた。トビラひとつ作るのに、それもラフ案を出すのに10日近くかかるようでは遅すぎる。

本の制作は、発行日が決まってしまえば何が何でも印刷所のスケジュールに間に合わせなければならない。ライターの原稿が遅れれば、その分DTPオペレーターの作業時間がタイトになる。チンタラやっている人では使い物にならないのだ。

いずれにしても、一からデザインを起こすのは無理だろう。そう考え、今度はレイアウトフォーマットがすでに決まっているページのDTPをやらせてみた。一定のルールに従って文章や図版を配置するだけだから、DTPソフトが使えるなら誰でもできるものだ。

この仕事も納期通りに組データを送ってきたが、その仕上がりはずさんなものだった。図版の見やすさなどはまったく考慮されず、文字組とのアキスペースなど最低限のルールすら守られていない部分もあった。

仕方がないので、またやり直してもらうことにした。不完全な仕事にお金は払えない。

ここへきて、私は彼女とのつきあいをこれまでにしようと思っていた。彼女には少なくとも30ページほどお願いするつもりだったが、このペースでは無理だろう。

 私は彼女に
・こちらが求めるレベルに達していないこと
・仕事が遅いこと
の2つの理由で今後の発注は見合わせると伝えた。

2度もやり直しをさせられているのだから、己の未熟さを恥じているかと思いきや、彼女からはこんな返事が返ってきた。

「レベルはともかく、仕事が遅いというのは納得できません。やり直しの際も納期は守っているはずです」

たしかに彼女は納期だけは守っている。しかし使い物にならない「不良品」を送りつけておいて、「遅れなかったからいいだろう」と胸を張るのはいかがなものか。「面の皮が厚い」とは、こういう人のためにある言葉ではないかと私は思う。


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