ええ格好したいのか仕事がしたいのか......
プライドを持って仕事をするのは大切なことだが、中身の伴わない虚栄心は滑稽なだけでなく、仕事にも確実に支障を来たす。つまらないことがきっかけで、仕事を中断して、自分の言い分をを認めてくれという矮小な主張をくり返す沙汰に、困惑させられたことは何度もある。
「主婦SOHO」がトラブルを起こすケースは、自分の仕事に見合わない図々しい請求をするときと、もうひとつは、今回ご紹介するような「脱線した矮小な自己主張」がほとんどではないかと思う。
20代の女性デザイナーにレイアウトを頼んだときのことだ。同じページに入る画像データを2種類渡してしまったことがあった。彼女からは「どちらを使えばいいのでしょうか」という問い合わせがきた。
急ぎの仕事だったので、不要なデータまで紛れてしまったらしい。私はそのことを詫びた上で、「スケジュールが詰まっているのでこちらも急いで作業をしている。もしかして今後もこういうことがあるかもしれないが、原稿と画像の内容から判断してどちらかを選択してもらえないだろうか」と答えた。
この返信に問題があるとは思えないし、もちろんに私に他意はない。ところがこの女性はそう受け取れなかったらしい。自分が、「画像の内容から判断してどちらかを選択」できない者であるかのように言われたと感じたらしく、わざわざもめ事を呼び込むような自己主張をした。
「どちらを使うべきなのかぐらい、私にだってわかっています。ただ、他の画像とファイル形式や解像度が違うので確認したかっただけです」
「確認」はもはや仕事を進める上で不要であると言っているはずだ。私は、「DTP用の画像データにはファイル形式や解像度、カラーモードなど一定の約束事がある。渡した画像をDTPで使えるように変換するのはオペレーターの仕事だ。
あなたの裁量で作業を進めてください」と噛んで含めるように伝えた。
ところが、彼女はなおも食い下がってきた。
「2つの画像の形式が違っているのをご承知ならいいんです。もしかしたら気づいていないかなと思って。あなたはそれに答えればいいんです」
不遜であり、また全く意味のない繰り返しである。百歩譲って当方が「気づいていない」としても、「画像の内容から判断してどちらかを選択」してくれと返事をしているのだから、作業を進めるための問題は解決している。ところが彼女はそれでは飽きたらずに、今度はDTPにおける画像データの解説を延々と始めた。
こういうパフォーマンスのために、この仕事は確実に遅れることになる。
「私はこんなにいろいろ知っているんです」と言いたいようなのだが、当方は別にこの女性の知識の多寡を知りたいわけではなく、使える商品(DTP)を作成してくれればそれでいいのである。そもそも、本当に知っている人はそんなところで空威張りの「知ったか」はやらない。案の定、彼女の話には勘違いや用語の間違いもあり、私に言わせれば基本的な部分での理解ができていないように思われた。これでは恥の上塗りだ。
その人が無知であっても私が知ったことではないし、もとより脱線に付き合う気はなかったが、現在の仕事にその間違いを適用されては困るので、私はそれらの間違いを指摘し、こちらがいちいち指示しないのは、そうした知識がないからではなく、オペレーターの仕事の領域だからあなたの判断に任せているのだということを説明した。
彼女はいよいよ立場がなくなったのか、言うに事欠いて遂にこんな要求まで行った。
「私はそういうコミュニケーションを求めていたのではありません」
メールには、たとえば私にはこう答えてほしかった、それに対する私の答えはこうだ、と想定問答をいくつも書いてきた。もう、完全に仕事のことは忘れているようだった。ここで推測はできると思うが、結局、この人はお願いした仕事を完了できなかった。
これ、にわかに信じがたいかも知れないが、子どものいる母親SOHOがやらかした実話である。彼女の無意味な粘りは、実は仕事の経験もなく知識にも自信がないことをはしなくも白状している。
世の中は厳しい。認めてもらうには結果を出すしかないのだ。それを忘れてはならない。
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